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フィフスホイール・トレーラーとドリフトボートを連結して引くピックアップトラック

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Road Worthy:ハッチを追って旅を続けるガイドの暮らし

Matt Ippoliti2019年8月13日

アメリカ東部のアングラーなら誰でも、レッドバッド(アメリカハナズオウ)の花が咲き始めると何が起こるかを知っています。小さな信号機のように、そのつぼみは冬の停滞に「ストップ」をかける合図です。春の大きなハッチは、春に真っ先に芽吹く植物のひとつによって幕を開けます。レッドバッドが咲くということは、大量に発生するグラノム・カディスの羽化が間近だということ。これが最初の大きなハッチであり、ここから3か月にわたって、同時に、あるいは重なり合いながら春のハッチが次々と続いていきます。冬のあいだ閉じこもっていた地元のアングラーたちは、この魔法のような季節を心待ちにしながらフライを巻いて過ごします。そして渡り鳥のように移動するガイドにとって、レッドバッドの開花は、キャンプをたたんで北へ向かう時が来たことを意味します。

車内で手の上にとまった黄色いメイフライ

私が東テネシーに足を踏み入れるようになったのは、ペンシルベニア州エリーで厳しい冬を何度か過ごし、すっかり凍えさせられたのがきっかけでした。そこで過ごした最後の冬はとりわけ寒く、春の遅くまで冷え込みが続きました。寒い時期のキャンプ生活には、いつも準備が欠かせません。トレーラーには加温式の給水ラインを引き、ほかの部分もしっかり断熱しておきました。ところが冬も終わりに近いある日、蛇口をひねっても何も出てきません。地下4ft(約1.2m)の水道本管が凍結していたのです。それから2か月間、シャワーはジムで浴び、トイレを流す水はエルク・クリークから運びました。電気も水道もない“オフグリッド”生活にこれほど近づいたことはなく、翌冬にもう一度やりたいとはまったく思えませんでした。新しいオフシーズンの拠点を探す時が来たのです。

次の秋のシーズン中、私は南東部の素晴らしいテールウォーター(ダム下流の放水河川)について知りました。シーズンの終わりに、友人2人とサウス・ホルストン・リバー・ロッジへ下見の旅に出かけました。そこで出会ったのは、春のような陽気と、毎日のように楽しめるドライフライの釣り。2本のテールウォーターはどちらも毎日フロートでき、コンディションも安定していました。迷いはありませんでした。テネシー州ブリストルを冬の避難先にしようと決めたのです。

それ以来、ブリストルで過ごす期間は年々長くなっています。秋になるとそこへ行くのが楽しみになり、春が来てもなかなか去る気になれません。滞在の終わりが近づくほど、天候とともに釣りもどんどん良くなっていくのです。この地域とのつながりも年を追うごとに強くなり、毎年すぐに生活になじむようになりましたが、それでも去るのが早すぎるという気持ちは変わりません。出発の時が近づくにつれ、自然のあらゆるものがこれから起こることを告げてきます。そして東部のレッドバッドの早い開花だけが、北でも同じことが始まる前に戻らなければならないと思い出させてくれるのです。

岩壁を流れ落ちて川に注ぐ滝

冬のテネシーのテールウォーターが安定していることは、西部の川のコンディションにも通じるところがあります。ミッジやオリーブ(BWO)のハッチは一年中起きているようで、魚は冬のあいだもしっかり捕食します。これは、川が凍りついて釣りがほぼ止まってしまう北東部とは対照的です。東部のハッチは、夏の暑さが訪れるころには終わってしまいます。ところがテネシーのテールウォーターは、年に最長9か月もハッチするサルファーのおかげでこのサイクルとは無縁です。北東部の素晴らしい釣りが短い期間に凝縮されているからこそ、レッドバッドの合図は特別なものになるのです。まるで川が目を覚ますかのように、冬のあいだあまり捕食していなかった魚たちが、狂ったように水面で食い始めます。アングラーにとって、川じゅうの魚が一斉にライズする光景は、ほとんど忘れかけていたスペクタクルです。私にとって、それは絶対に見逃せないものなのです。

この移動を前提に生活を組み立てているとはいえ、荷物をまとめて拠点を移すのは決して簡単なことではありません。いつも期待と不安が入り混じります。アッパー・デラウェアでガイドをするためのライセンス関係の書類の山も乗り越えなければなりません。直前に入るガイドの予約は、前もって準備しようとする努力を妨げます。人間関係は、行く末が見える前に遠距離になってしまうことがほとんどです。車とトレーラーの整備も欠かせません。ベアリングのグリスを詰め直し、オイルも交換する必要があります。道中のトラブルを防ぐためにできることは、すべて事前に手を打っておかなければなりません。それでも、防ぎようのないことは必ず起こるものです。

なかでも最悪なのが、キャンピングトレーラーのスライドアウト(拡張部)が引っかかって収納できなくなることです。外すのに何時間もかかることが多く、そのせいで出発時刻が大きく狂ってしまいます。出発が遅れれば、暗いなかを運転し、暗いなかでキャンプを設営することになります。スライドが動かなくなると、キャンプはある種の“煉獄”と化します。あのいまいましい代物が収納位置に戻らないかぎり出発できず、かといってそのまま居座るわけにもいきません。スライドの収納はキャンプ撤収の一番最後の工程なので、手順を巻き戻せば別のスライドまで引っかかる危険があるのです。

川を背にボートに座る黒い犬

あるとき、言うことを聞かないスライドの油圧シリンダーのブラケットが吹き飛んだことがありました。壊れた瞬間の音は、まるでショットガンをぶっ放したかのよう。続けざまに私の口から飛び出した悪態は、それ以上の大音量でした。それが起きたのはメソジスト派のキャンプ場で、どちらも聞き流してはもらえませんでした。私が被害状況を確かめていると、キャンプ場の年配の方々が何人か集まってきました。私は勢いにまかせて、収納庫から溶接機、グラインダー2台、トーチ、鋼材の山を引っ張り出しました。皆さんが驚いて見守るなか、近くのピクニックテーブルを即席の金属加工場に変えて、新しく改良したブラケットを作り上げたのです。それを取り付け、道具をすべて片付けて、スライドを収納しました。ところが、私の誇らしい瞬間は、ごく真っ当な一言であっさり黙らされました。年配の方のひとりが、「そもそもトレーラーにそんな重たい機材を積んでいなければ、スライドが引っかかることもないんじゃないか」と言ったのです。私はどちらかといえば、「晴れた日のフロートにもレインコートを持っていけば雨は降らない」という考え方で動くタイプです。この哲学には何度も救われてきましたが、決して身軽とはいえません。

北への移動では、22,000lb(約10t)のフィフスホイール・トレーラーを引き、さらにその後ろにスティンガーヒッチでドリフトボートのトレーラーをぶら下げて走ります。西部を旅するときは法的に認められていましたが、東海岸の州ではどこもこの連結は認められていません。ペンシルベニア中部へ、そしてその後アッパー・デラウェアの川岸へと北上する道のりには、常に警察とのトラブルの危険がつきまといます。主要な幹線道路を避けるための迂回が必要で、バージニアを通れば間違いなく面倒なことになります。一般道を使った長い遠回りのルートは、旅をさらに複雑にします。ほかにも、バックできない、Uターンできない、給油はトラックストップ以外では難しい、といった心配事もあります。そこへ警察の前を通るたびの不安が重なれば、年2回の私の“東部大移動”の出来上がりです。

この時期、いつも羨ましく思うのが、何も気にしていない愛犬の様子です。彼はただ、どこかへ、とにかく出かけられるのが嬉しいのです。800マイル(約1,290km)にわたって“サーカス列車”を引きずっていくことにまつわる、ありとあらゆるトラブルの可能性など、彼の頭には一切浮かびません。この種の旅で起こりうることの多くをすでに経験済みだからといって、私が安心できるわけではまったくありません。別れの挨拶を済ませ、何事もない旅になることを願ってすべてを荷造りします。そしてたいていの場合、ちょっとしたトラブルがいくつかある程度で、無事に済むのです。

ドリフトボートから釣りをするアングラーたち

ペンシルベニアに着くと、決まって少し早く来すぎたことに気づきます。まるで冬へ逆戻りしたかのようです。南からの“キャノンボール・ラン”をまたしても無事に走り切ったご褒美は、たちまち凍りついたキャンプの給排水設備と、身を切るように寒い朝に変わります。霜が残るうちはドライフライの釣りはお預けで、水温が上がり始めるまでは、ストリーマーやニンフのロッドで時間をつなぎます。年を重ねるにつれて、緯度によるレッドバッドの開花時期の違いが少しはわかるようになりましたが、完璧にはいきません。忍耐と、ひどい状況への耐性こそ、ハッチを追うアングラーの証です。早すぎれば凍えるほど寒い思いをし、遅すぎれば何も起こらなかったのと同じこと。大きなハッチの魔法のような初日に確実に立ち会おうと思えば、早めに到着するしかないのです。南からは、釣りも天気もどれほど素晴らしいかという便りがぽつぽつと届きます。冬の停滞はだらだらと続き、この待ち時間こそ、そもそも移動してきた判断を疑ってしまう時期なのです。

そのうえ、神秘的な“奇跡のハッチ”そのものが起こらないかもしれないという不確定要素もあります。大雨や増水は予測できず、大きなハッチを釣りにならないものにしてしまいます。渇水の年にはドリフトボートは役に立ちません。ハッチの悪い年は物足りない結果に終わり、逆に虫が川一面を覆うようなハッチでは魚を釣るのが難しくなります。仕事の都合で、早く到着できない年もあれば、それ以上待っていられない年もあります。時には、自然にしかわからない理由で、ただ何も起こらないこともあるのです。

それでもすべてがうまく噛み合い、星の巡りが揃ったとき、奇跡は起こります。春最初のハッチの最初の数日間は、まさに信じられない光景です。そこにたどり着くまでの狂騒はすべて消え去り、この移動がいかに賢い選択だったかを実感します。そこには、生活のすべてがそのまま揃っています。靴下はいつもの引き出しに入っていて、テレビのリモコンはテネシーにいたときとまったく同じ場所で行方不明になっています。いつもと同じ机でフライを巻き、いつもと同じ窓から外を眺める。変わったのは景色だけです。転がる我が家とボート、そしてすべての荷物とともに、そこにいる。何もかも出発したときのままです。あなたと、何も気にしていない愛犬は、その瞬間にいるべき場所に、まさにたどり着いたのです。それこそが、私を動き続けさせ、私を“ロードワーシー(旅に耐えうる存在)”でいさせてくれるものなのです。

トレーラーとドリフトボートを連ねて引くピックアップトラック

著者について

Matt Ippolitiは、フライフィッシングガイドでありSAGE Elite Pro。テネシー、ペンシルベニア、ニューヨーク、コロラドを渡り歩く、まさにノマドなライフスタイルを貫いています。それぞれのフィッシャリーで培った情熱と経験は、どこで彼のボートに乗っても存分に感じられるはずです。

フライフィッシングガイドのMatt Ippoliti

原文:Road Worthy(Matt Ippoliti/SAGE・Far Bank Enterprises、2019年8月13日)
写真:SAGE・Far Bank Enterprises
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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