私が初めて買ったスペイラインは、百科事典ほどの厚さの箱に入っていました。好奇心をかき立てるようにデザインされた本の表紙のように、箱のぱりっとした端には「Spey」という文字が大きく記され、中身への期待で私はすっかりその気になっていました。
手にしたものは、まさに百科事典といっても過言ではありませんでした。知識と成長の可能性に満ち、比較は明らかでした。違いは、百科事典ならどこから読み始めればいいか分かっていたということだけです。
当時の私は、市場で最もキャストしやすいスペイライン、全長(ヘッド)55ft(約16.8m)のWindCutterを手に入れたばかりでした。キットにはミッドベリーライン(ランニングラインと一体化済み)と、15ft(約4.6m)のシンクチップ一式が入ったコンパクトなウォレットが付属し、各沈下速度を説明する厚紙が入っていました。キャストを始めたばかりの私のストロークは見るに堪えず、グラファイトの棒で液体の氷を割ろうともがく山男さながらでした。ぞっとする光景です。
その後まもなく、おなじみのスカジット・シューティングヘッドが登場し、すべてが一変しました。WindCutterの半分の長さしかない、短く凝縮されたヘッドによって、特にバックキャストのスペースが限られた場所でも、重いシンクチップや大きなフライを楽にターンオーバーさせられるようになったのです。このラインは太平洋北西部で開発され、太くテーパーした先端にチップを付けてキャストするように特別に作られていました。ロッドが完全にロードする前にアンカーが水面から引き剥がされてしまうのを防ぐためです。一般的なルールとして、シンクチップは使用するロッドより長くすべきではなく、ほとんどのチップは11〜15ft(約3.4〜4.6m)ほどの長さです。
スカジットラインは、ラインのカテゴリーのなかでも比較的キャストしやすいとされており、ガイドをする私たちの多くにとってありがたい存在です。キャストを始めたばかりの人も短いラインのストロークにすぐに慣れ、フライを背後の草むらではなく水中に保てるので、水辺での時間をより効率的に使えます。この思わぬキャスティングの助けを得て、私は古いレッドコアラインのほこりを払い、安上がりな自作システムを作り始めました。そうしたのは私だけではありませんでした……。


やがてショップでは、さまざまな沈下速度や長さのチップが、手作りのタングステン製(T7、T11、T14などと表記)と、RIOの完成品のチップシステム(Type 3、Type 6、Type 8などと表記)の両方で売られるようになりました。多くのお客さんにとって、この2つの違いは分かりにくいものでした。どちらのシステムも「T」で始まる言葉で呼ばれている、という単純な理由で混乱する人もいれば、それぞれが水深や密度とどう関係するのかで混乱する人もいました。MOWチップ、T17、ループをフューズしたタングステンシステムも加わり、混乱は広がるばかり。RIOから4つのチップシステムが出ていることで、お客さんの間での混乱はさらに大きくなっているようです。普段から使っている人にとってはどのシステムもごく当たり前のものですが、お客さんによっては自分が時代遅れだと感じて、気後れしてしまうこともありました。
海外から来るお客さんの多くは、さまざまなポリリーダーやVersiLeaderを持って来ますが、私たちは一般的な目安として、そうしたリーダーはスカンジ(またはより長いライン)で投げるのが最適だと説明しなければなりません。スカジットラインの太いフロントテーパーと、そうしたリーダーのバット部との径の差によって、エネルギーがうまく伝わらないからです。そうしたこともあって、スカジット用シンクチップのごく基本を分かりやすく説明できたらいいのではと考えました。
そこでRIOのSimon Gawesworthに話を聞いて謎を解き明かしてもらい、ここに分かりやすくまとめました。水辺での時間が少しでも楽しくなれば嬉しいです。
オプション1:15 Foot ‘Type’ Tips(15ftの「タイプ」チップ)
オリジナルの15ftチップには色分けされた溶着ループが付いており、チップの密度(ここでは沈下速度)と、使用するロッド/ラインの番手を示しています。最も重いチップ(タイプ8)が最も軽いチップ(タイプ3)より細いことに気づくでしょう。それがこのシステムの仕組みを表しています。
これらのチップはテーパーしているので、レベルのタングステンチップよりもはるかに良いプレゼンテーションができます。ラインナップは次のとおりです。
- フローティング
インターミディエイト(毎秒1.5〜2インチ=約3.8〜5.1cm)
タイプ3/イエロー(毎秒3〜4インチ=約7.6〜10.2cm)
タイプ6/グレー(毎秒6〜7インチ=約15.2〜17.8cm)
タイプ8/グリーン(毎秒8〜9インチ=約20.3〜22.9cm)
バランスの取れたタックルとしての一貫性を保つため、各チップにはロッドの番手ごとに標準重量(グレイン表示)が設定されています。
たとえば、#10のチップは上記のどの「タイプ」でもすべて150グレインなので、ロッドを効率よくロードさせるのに必要なライン重量を失うことなく、チップの密度(水深)を変えられます。(#8=109グレイン、#9=129グレイン、#10=150グレイン、#11=166グレイン)
オプション2:15 Foot ‘Type’ Tips(「タイプ」チップ)
これは15ftチップを単に短くしたバージョンです。短めのロッド、キャストスペースが狭い場所、小さな川に最適です。密度の選択肢は上記の15ftチップと同じです。
オプション3:Level ’T’(タングステンのT)Tips
これらのチップはレベル(テーパーなし)で沈下が速く、好きな長さにカットして使うように設計されています。テーパーがないため「パンチ」が効き、大きなフライもキャスターがさほど力を入れなくてもターンオーバーします。
上記の「タイプ」チップの密度とはまったく逆に、これらのラインは1ftあたりのグレイン数に応じて沈みます。「T」チップの場合、これはチップ1ftあたりに含まれるタングステンの量に相当します(たとえばT8は1ftあたり8グレイン)。
T8/ホワイト(毎秒6〜7インチ)
T11/グリーン(毎秒7〜8インチ)
T14/ブルー(毎秒8〜9インチ)
T17/ブラック(毎秒9〜10インチ)
T20/なし(毎秒10インチ以上)
オプション4:MOWチップ(McCune、Ward、O’Donnellの頭文字)
長さは10ftと12ftの2種類で、ライト、ミディアム、ヘビー、エクストラヘビーのクラスがあります。素材は「T」チップと同じタングステンで、次のように対応します。
ライト=T8/ホワイト
ミディアム=T11/グリーン
ヘビー=T14/ブルー
エクストラヘビー=T17/グレー
では、MOWチップと「T」チップの違いは何なのでしょうか?
フルシンクのチップを使わずに、ポケットウォーターや岩/ストラクチャーの裏にフライを狙って沈めたい場面があります。時には、魚を釣るために必要なプレゼンテーションを得るのに、わずか2ft(約60cm)のシンキングラインがあれば十分なこともあるのです。
問題は、2ftのシンクチップでは、短くコンパクトな構造のスカジットラインが水中にアンカーできず、ロードのスイートスポットから「抜けて」しまうことです。
MOWチップには、長さの異なるシンキング部分をフローティングラインに継ぎ目なく融合させた6種類のチップがあります。以下の各ブレンドチップは、前述のライト、ミディアム、ヘビー、エクストラヘビーがそろっています。
10ftフローティング
7.5ftフローティング/2.5ftシンク
5ftフローティング/5ftシンク
2.5ftフローティング/7.5ftシンク
10ftシンク
12ftシンク

ライト、ミディアム、ヘビー、エクストラヘビーの各クラスについて、RIOの推奨は次のとおりです。
ライト:475グレイン以下のスカジットラインに最適
ミディアム:475〜575グレインのスカジットラインに最適
ヘビー:575〜700グレインのスカジットラインに最適
エクストラヘビー:700グレインを超えるスカジットライン、または大きく重いフライを使う場合に最適
個人的には、こうした仕組みを理解した今でも、目を輝かせてスペイを始めた頃と同じシンクチップを愛用しています。色あせたグレーから白になった「タイプ6」の15ftチップ(今では少しずつ切り詰めて約13ft=約4mになっています)です。状況に応じて釣り方を変え、ハイスティックで流すこともあれば、スラックを入れることも、シームで横方向のテンションをかけながら歩かせるように流すこともあります。そして多くの場合は、押しの強い流れに好きなように弄ばせておくだけです。
キャスティングに関するあらゆることと同じように、正しいロッドロードの効率を決めるのは数学と物理学だけです。さまざまな密度や素材の物体が、流れの速さや水理によってどのように沈むのかを理解するにも、どちらも同じように欠かせません。
正直なところ、魚が好むと感じるプレゼンテーションに関わるあらゆる要素を分析するのに一生を費やすこともできます……あるいは、自分に合うものを見つけて、ただ釣りに行くこともできるのです。
原文:Skagit Tips(April Vokey/RIO・Far Bank Enterprises、2015年6月5日)
写真:RIO・Far Bank Enterprises
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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