ヘンリーズフォークのハリマン州立公園区間に広がる広大なフラット、北カリフォルニアのフォール川の深いラン、ミズーリ州クレインクリークの静かな浅瀬。こうしたスプリングクリークは、トラウトフィッシングにおける究極の挑戦の場です。モンタナ州のミズーリ川、オレゴン州のオワイヒー川、東テネシーのサウスホルストン川といったテールウォーター(ダム下流の川)でも、同じような釣りを体験できます。この種の釣りは誰にでも向いているわけではありません。自分が何をしているのか理解していなければ、欲求不満と落胆で終わってしまうのがおちでしょう。私は長年、世界で最も難しい川のひとつ、スネーク川のヘンリーズフォークで釣りをしてきました。数多くの失敗を見てきましたし、自分のショップで悩めるアングラーたちとたくさん話をしてきました。ここでは、多くのアングラーが犯しがちな10のよくある失敗を紹介します。これらを避けて、スプリングクリークやテールウォーターの挑戦に万全の準備で臨んでいただければ幸いです。
I. フォルスキャストのしすぎ。フォルスキャストは、ラインを伸ばしたり、キャストの方向を変えたり、フライを乾かしたりするのに役立ちます。しかし、ほとんどの釣りの場面では、フォルスキャストは無駄で不要なものです。たとえくすんだ色のラインを使っていても、フォルスキャストをすれば魚にこちらの存在を気づかれる可能性が高くなります。さらに、水面に水しぶきを飛ばして魚に警戒させてしまいがちです。トラウトに有利な条件をわざわざ増やしたくないなら、フォルスキャストは最小限にとどめましょう。
II. 遠くに投げすぎる。正確にキャストできる楽な位置に入れば、確率は上がります。たとえキャスティングの名手でも、近づいたほうが正確に投げられます。水面に乗るラインが少ないほうが、ドラッグフリーのドリフトも得やすくなります。
III. 正確さの重要性を軽視する。私は、ライズしているトラウトへの最初のキャストこそが最も重要だと強く信じています。キャストを重ねるごとに、魚がフライを食う可能性は下がっていきます。多くのアングラーは、できる限り遠くへ投げることでキャスティングの練習をしています。それよりも、20ft、30ft、40ft(約6m、9m、12m)の位置に的を置き、安定して的に当てられるようになるまで練習したほうがずっと効果的です。どんなに優れたスラックラインキャストも、正確に投げられなければ意味がありません。
IV. フライを頻繁に替えすぎる。魚の上にうまくドリフトさせたのに食わなかったら、フライを替えるべきだと考えるアングラーがいます。しかし、捕食しているトラウトをじっくり観察すると、何匹もの本物の虫を食べずにやり過ごしていることがよくあるのに気づくはずです。トラウトの捕食のリズムをつかみ、あなたのフライが捕食レーンに流れ込んだときにトラウトが食う準備ができているようにしなければなりません。
V. 不用意なウェーディング。音波は水中をとてもよく伝わります。トラウトは振動にも非常に敏感です。ゆっくりと、できるだけ静かに近づかなければなりません。こちらの存在を感じてもトラウトは逃げないかもしれませんが、たいていは同じ捕食位置にとどまらなくなります。ヘンリーズフォークで最も釣るのが難しいトラウトは、こちらの存在を感じ取って、捕食を続けながら離れていく魚です。
VI. せっかち。何も起きていないときでも、釣りを始めたい衝動を抑えるのは難しいものです。やみくもにキャストして広く探るのは、たいていの場合釣れないばかりか、多くの魚を驚かせてしまうことになります。捕食しているトラウトを見つけたら、何を食べているのかを見極め、捕食のリズムをつかんでからキャストを始めましょう。
VII. 水生昆虫学の基本を理解していない。ラテン語の学名を並べれば仲間には一目置かれるかもしれませんが、トラウトには通用しません。特定の種を同定することよりも、メイフライ、カディスフライ、ストーンフライ、ミッジといった主要な水生昆虫の目(もく)の生態を理解することのほうがはるかに重要です。たとえば、水面にカディスが見えたら、水面の虫に合ったサイズとカラーのピューパを使えば、たいていうまくいきます。
VIII. マッチ・ザ・ハッチを複雑に考えすぎる。私の考えでは、正確でドラッグフリーなプレゼンテーションのほうが、ハッチを的確に合わせることよりもはるかに重要です。とはいえ、正しいフライで良いプレゼンテーションができれば、確率はぐっと上がります。捕食しているトラウトを見つけたら、何を食べているのかを探り、サイズ、シルエット、姿勢、明るさ、色など、本物の虫と同じ特徴を持つパターンを選びましょう。
IX. 間違ったターミナルタックルを使う。スプリングクリークやテールウォーターで使うロッド、リール、ラインの種類については、ほとんどのアングラーが理解しています。ところが、長すぎたり柔らかすぎたりして正確にキャストできないリーダーやティペットを使っていることがあります。何を読んだかはともかく、15ft(約4.6m)のリーダーに4ft(約1.2m)のティペットを付けて正確に投げられるベテランのスプリングクリークアングラーはごくわずかです。ほとんどのアングラーは、自分が扱いやすいシステムを使い続けるべきです。状況によってターミナルタックルが決まることもあります。風があるときや大きなフライを使うときは、リーダーとティペットを短くするのが私の好みです。ほとんどの場合、私は12ft(約3.7m)のテーパードリーダーに約3ft(約0.9m)のティペットを使います。新しいテーパードリーダーは必ず先端の18インチ(約45cm)を切り落とし、ブラッドノットでティペットをつなぎます。そうすれば、ティペットをどれだけ使っているか常に把握できます。
X. 魚の見つけ方を知らない。ヘンリーズフォークのような大きな川では、魚を見つけるのが難しいことがよくあります。大きなトラウトは、フラットな水面でほとんど波紋を立てずに捕食することがあります。時間をかけて観察し、耳も澄ませてください。私は、大きなトラウトをライズの姿ではなく音で見つけた経験が何度もあります。えぐれた岸際やウィードベッドの根元など、隠れ場所になり流れから身を守れる場所を探しましょう。
私は釣りについて知っていることのほとんどを、痛い目にあいながら学んできました。ここに挙げた失敗は、すべて私自身もやってきたことです。この10のよくある失敗を心に留めておけば、痛い思いをして学ぶ必要はないはずです。幸運を祈ります!



原文:10 Common Mistakes for Spring Creeks(Mike Lawson/RIO・Far Bank Enterprises、2016年4月27日)
写真:RIO・Far Bank Enterprises
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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