今年は西海岸に雨が多かったせいで、休みの日はいつも決まって曇り空。釣りには理想的とは言えないコンディションばかりでした。家に閉じこもるしかなかった私は、いくつものSNSで延々と魚の写真や動画を眺め続け、Wi-Fiを酷使する毎日。釣りに行けないうえに、自分の大好きなことを楽しむ他人の姿を見せつけられ続けたせいで、水辺に戻りたくてうずうずしていました。そこで、陰鬱な冬を乗り切るために、5月下旬のバハ(メキシコ・バハカリフォルニア)への釣行を予約したのです。
5月が迫るなか、数か月のブランクでキャスティングの腕はすっかり錆びついていました。そろそろ水辺に出て練習しなければと思ったものの、南カリフォルニアの春は、アングラーにとって選択肢が多くありません。地元のリザーバーでバスを狙うか、気難しいカープを追いかけるか、あるいは雪代前のトラウトを求めてイースタン・シエラまで遠征するか。ボートも持っておらず、北へ車を走らせる時間もなかった私は、錆を落としがてら、シーズン初めのコルビナやハリバット、あるいはフライのそばを泳いでくる何かに出会えればと、ビーチへ向かうことにしました。

親しい友人のひとりから、レオパードシャークが姿を見せ始めたという情報をもらいました。カリフォルニアの海岸には一年の大半を通してレオパードシャークがうようよいる、というのは周知の事実です。秘訣は、彼らにフライを食わせることにあります。レオパードシャークの出没は気まぐれです。ある日はサーフの中を滑るように泳ぐこのとらえどころのない巨体を目にできても、同じ潮回りで次の10回出かけても、サンドクラブ(スナガニ)1匹見られたら運がいいほう、ということもあるのです。

インターネットや地元のショップから得られる情報はごくわずかでしたが、私は少しずつ作戦を組み立てていきました。以前にサメを釣った経験もあったので、それなりに自信はありました。これだと思う場所と潮を選んだら、サーフの中でこの生き物たちが好んで食べるものに似せたパターンを次々と巻いていきました。作戦は固まり、ほぼ完璧に思えました——あとはサメが協力してくれさえすれば。
大きな魚の前にフライを投げることにかけては私と同じくらいクレイジーな相棒、Seth Blackamoreが、ちょうど家族に会うためにこちらへ来ていました。一緒に海岸へレオパードシャークを探しに行こうと誘うのに、説得はほとんど必要ありませんでした。翌日、二日酔いで昼近くに目を覚ますと、Sethは時間ぴったりに——といってもほんの1時間半遅れで——現れました。「朝食」とビールを調達してから、サンディエゴへ向かいました。片手に10番ロッド、もう片方の手にビールを持ち、波の向こうには必ず魚がいるものと期待して、海岸をくまなく探し始めました。ところが実際に目にしたのは、見事なまでに何もない海だったのです。

RISE
9/10 型破りな釣りをする人の個性に合わせた、型破りな一台。
このとき私たちは、ビーチを1〜2マイル(約1.6〜3.2km)ほど行ったり来たりしましたが、得たものといえば日焼けと、前夜の二日酔いが少し抜けたことくらい。打ちのめされ、脱水気味になった私たちは車に戻り、もう一本ビールを開けて、いったい何がいけなかったのかを考えることにしました。ビールを何本か空けたころ、気づけば私たちは、丘の斜面を横切りながら海岸線に沿って降りてくるヘリコプターをぼんやりと眺めていました。ヘリコプターが頭上を通り過ぎたそのとき、サーフの中を回遊するレオパードシャークのシルエットが目に入ったのです。

まるで何かの合図があって、スイッチが入ったかのようでした。サーフの中——というより、このときは波がほとんどなかったのですが——を回遊するサメが次から次へと見え始め、そのおかげでサメの大きさも進行方向も見やすくなりました。サイトフィッシングができるようになったので、私たちはすぐに背後の高台を見張り台として使うことにしました。一人がビーチへ走り出し、もう一人が上から魚の位置を叫んでショットを誘導するのです。その大騒ぎのさなか、バハへの釣行まであと1か月もないことに、私はふと気づきました。

サーフを回遊するサメは、軽く100尾は超えていたでしょう。キャストの多く、いや大半は見向きもされませんでした。フライを追ってきても最後の瞬間に向きを変えられてしまうこともありましたが、何尾かは幸運にも私たちと遊んでくれる気になってくれました。
……そして、現れたときと同じくらいあっという間に、サメたちは姿を消しました。
その後も似たような潮回りに何度か出かけ、ときどき数尾を見かけることはありましたが、Sethと二日酔いを治しながらバハに向けて錆を落としたあの日のような光景には、二度と出会えていません。

写真はすべてSeth Blackamoreによるものです。
原文:Shark Week(Matus Sobolic/REDINGTON・Far Bank Enterprises、2017年4月25日)
写真:Seth Blackamore(REDINGTON・Far Bank Enterprises)
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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