その大きさゆえに記憶に残る魚がいます。棲んでいる場所ゆえに忘れられない魚もいます。そして、その瞬間のすべてが「ありえない」と感じられたからこそ、心に刻まれる魚もいます。
REDINGTONアンバサダーのMacKenna Stang(@mackonthefly)にとって、アイスランド北部の人里離れた峡谷の川でアトランティックサーモンを追った経験は、まさにそんな瞬間になりました。切り立った崖を進み、翡翠のように澄んだ水を探り、一瞬の判断を重ねる中で、ありえないことが現実になったのです。
その先に待っていたのは、一生に一度の一尾だけではありませんでした。最も大きなものがかかった場面で、自分のギア、ガイド、そして自分自身を信じることの大切さを学ぶ経験でもあったのです。



ミーラクヴィストル(Mýrakvísl)峡谷は、私がこれまで魚を追う機会に恵まれた中でも、最も素晴らしい場所のひとつです。アイスランド北部の大地を縫うように流れ、水はあまりに澄んでいて、どこまでが浅瀬でどこからが深みなのか見分けがつかないほど。鮮やかな緑の苔が火山岩を覆い、非現実的な色のコントラストが、まるで別の惑星に足を踏み入れたかのような気分にさせます。ここの魚はとても警戒心が強いので、そっと忍び足で動かなければなりません。そして7月から9月にかけてのわずかな期間だけ、産卵のために川を遡上するアイスランドの名高いアトランティックサーモンを狙うチャンスがあります。
ミーラクヴィストルでは以前、アイスランド在来のブラウントラウトを釣ったことがありますが、アトランティックサーモンを追うのは今年が初めてでした。峡谷沿いを歩くと周囲の壁が急に切れ落ちていて、より技術的なアプローチが求められます。ロッジが目印をつけたプールへ安全に降りるには、ロープを使うしかない場所もあります。ゆっくり動き、周囲に細心の注意を払うことが欠かせません。不用意な一歩で、プール全体を台無しにしてしまうこともあるのです。
この旅で最も記憶に残る一尾は、よく晴れた明るい午後、上から小さなサーモンの群れを見つけたときに訪れました。魚は大きく、はっきりと見えました。ところが残念なことに、魚たちはロープで降りる場所のすぐ近くに危ういほど寄って定位していたのです。プールへ降りていけば、一瞬で魚を散らしてしまうでしょう。もう望みはないと思いました。
そのとき、ガイドのIsakが別の方法を提案してくれました。峡谷の壁にある細い岩棚(これまでそこから釣った人はほとんどいない場所)なら、チャンスがあるかもしれない、と。ただひとつ問題がありました。そこは私がやっと立てるほどの幅しかなく、しかも私は高いところが得意ではないのです。私はためらいました。
でも、ふと思ったのです。「こんなチャンス、次はいつ来る?」こうした機会はめったにありませんし、魚は待ってくれません。だから私は緊張を飲み込み、Isakのあとについて峡谷の縁へと降りていきました。



岩棚にたどり着くまでには、ゆっくりと慎重に蛇行しながら進み、何度か深呼吸をする必要がありました。足場が落ち着くと、Isakが私のタックルを手渡してくれました。10ft 8番のREDINGTON EDCに、ACEリールの7/8を組み合わせたセッティングです。旅の間ずっとこの10ftロッドに助けられてきましたが、この瞬間ほどありがたく感じたことはありません。この位置からは、下流側の対岸へ向けてキャストするためのリーチが必要でした。EDCの長さのおかげで、きれいにロールキャストを決め、厄介な流れのヨレを越えてメンドを入れ、ラインを峡谷の壁から離しておくことができたのです。
最初はマイクロトレブルフックに巻いたフローティングのレッド・フランシスから始めました。魚はフライに気づいていましたが、本気で誘うには深さが足りませんでした。
心臓が高鳴る中、足を滑らせないよう気をつけながら、「ザ・フリッギ」というウェイト入りのフライに替えました。川面からかなり高い位置にいたため、フライにもラインにも苔が絡みつき、アプローチを考え直さざるを得ませんでした。最終的に、フライを真下へ落とし、何度かメンドを重ねてフライを沈ませ、サーモンに向かってスイングさせることにしました。
そして……ドン。フライがぴたりと止まりました。一瞬、岩に引っかけたのかと思いました。ところがフッキングすると、ロッドティップが峡谷に向かって突っ込み、魚だとわかったのです。膝が崩れそうになりました。
興奮は一瞬で押し寄せましたが、恐怖も同時にやってきました。さて、どうする? 崖の上からサーモンとファイトするなんて、リハーサルしておけるシナリオではありません。足場を失うのが怖くて、私は固まってしまいました。
父とIsakが上から声をかけてくれ、峡谷の壁をゆっくりと元来た道で戻るよう励ましてくれました。とても無理だと思いました。でも二人の助けを借り、震えながら何度も息を整えて、作戦を立てました。Isakはネットを持ってロープを伝いプールへと急いで降りていきます。父は私の上に陣取り、私が安全に移動できるようロッドを受け取る準備をしてくれました。私は魚にラインのたるみを与えすぎないよう注意しながら、EDCを父のほうへそっと差し出しました。ACEリールのドラグは滑らかで安定したまま、完璧なテンションを保ってくれました。
私が父のところにたどり着いたころ、Isakが下から叫びました。魚をランディングしたのです! 美しく力強いアトランティックサーモン。勝利の瞬間でした。

まだアドレナリンが駆け巡る中、私は震えながらロープを伝って二人のもとへ降りていきました。ネットの中のサーモンは生命力にあふれて暴れ、鋭く曲がったカイプ(鼻曲がり)と、縄張りを持つオスならではの紛れもない体つきをしていました。現実とは思えませんでした。この情熱に注いできたすべてが一つに結実する、めったにない瞬間のひとつでした。
この一尾のためには、たくさんのピースがうまくはまる必要がありました。父とIsakは私を落ち着かせ、安全に動けるよう助けてくれ、まさにチームとして動いてくれました。でも、ギアも重要でした。これは軽い気持ちで言っているのではありません。崖の上から、一度もファイトしたことのない魚種を狙うには、信頼できる道具が必要だったのです。
10ftのREDINGTON EDCはまさに命綱でした。その長さが、キャストを決めるためだけでなく、崖の縁から危険なほど身を乗り出さずに魚とファイトするために必要なコントロール、リーチ、そしてレバレッジを与えてくれました。肝心な場面で滑らかで安定したドラグを発揮してくれたACEリールとの組み合わせは、私の予想をはるかに超えて、あの混乱した状況に対応してくれました。
この一尾の動画を初めて投稿したとき、ほとんどの人は応援してくれました。でも中には、なぜ魚のために「命を危険にさらす」のかと尋ねる人もいました。私の正直な答えは? 人生は短い、ということです。文字どおりの意味でも比喩的な意味でも、岩棚に一歩踏み出さなければ、自分を変えてくれる経験を逃してしまうかもしれません。
もう一度同じ場面が来たら、迷わずまたやります。それこそがフライフィッシングのすべてです。なかなか釣れない魚を追うスリル、釣りが連れて行ってくれる野生の場所、そして決して忘れることのない物語。



原文:On Location with Mackenna Stang in Iceland(MacKenna Stang/REDINGTON・Far Bank Enterprises、2026年7月14日)
写真:REDINGTON・Far Bank Enterprises
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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