ミッドウエストの伝統は、私の家族の中にしっかりと根づいていて、決して変わることがありません。
赤ちゃんの頃から、私たちは毎年夏になるとミネソタ州北部の同じ湖でキャンプと釣りをしてきました。父やおばたち、おじたちが子どもの頃にキャンプをしたのも、この同じ湖です。私の家族は何世代にもわたってこの場所を楽しんできて、この湖は私の心の中で特別な場所を占めています。10代の頃は、北へ出かけて夏休みを丸1週間「失う」、この湖に閉じ込められるのが嫌でたまらなかったのを覚えています。でも大人になった今では、この家族旅行を逃す理由になるものなど何ひとつありません。今住んでいる場所と、この北の小さな楽園との間に横たわる1,700マイル(約2,700km)の距離でさえもです。


家族は私が育つ中で、家族の伝統についてたくさんのことを教えてくれました。そうした伝統は、私という人間を形づくるうえで大きな役割を果たしてきました。伝統は私に、家族とのつながりを深める帰属意識や目的、そしてアイデンティティを与えてくれます。夏の家族での釣り旅行は、私にとっていつまでも最も思い出深く、懐かしい家族の伝統です。私にはまだこの伝統を受け継ぐ子どもはいませんが、ボーイフレンドのKCとそれを分かち合い始めることに、ワクワクすると同時に少し緊張もしていました。何時間も高速道路を走ったあと、湖へと続く穴だらけの道へと曲がります。いつものキャンプ場所に車を停めて、荷物を降ろし始めました。たちまち、姉妹と一緒に桟橋から釣りをしたこと、古いフィッシュハウスのにおい、祖父に初めて魚のさばき方を教わったことなど、思い出があふれ出してきます。一歩進むごとに、子どもの頃を思い出させる何かがそこにありました。
私の知る限り、この湖にフライが落とされたことはこれまで一度もありません。私たちはロッドを手に取り、ラインの先にポッパーを結びました。遊んでくれる魚がいるかどうか、確かめに出かけます。父の古いアルミボートに乗り込みました。父がもう少なくとも100年は持っているんじゃないかと思えるほどのボートです。今でも父は「お前が触るまでは絶好調だったんだ」と言い張っています。日が暮れるまで残り数時間というところで、私たちは湖へ出ました。妹もこの夕マヅメのミッションに加わりました。ポッパーに1尾か2尾が出る成功の夕べになるのか、それともボウズに終わるのかを見届けるためです。妹がボートに飛び乗り、私たちは栄光を求めて出発しました。妹を見ていると、子どもの頃の自分を思い出します。かつてはこの場所を嫌っていたのに、今では何カ月も前から楽しみにする時間になっている。そんなところまで私と同じです。妹は釣りも大好きになり、フライフィッシングをもっと知りたいと興味を持ってくれているので、そこに関われることが私はとてもうれしいのです。


RISE
RISE 7/8
RISEリールは、軽量なU字型ラージアーバーのマシンドアルミ設計。キャストに集中させてくれるので、後頭部にフライを突き刺すこともありません。
その夜の湖面は、まるでガラスのようでした。空の色が湖面に映り込んで踊る様子を眺め、あたりにこだまするアビの鳴き声に耳を傾けました。ミネソタの夕日はいつも本当に美しく、今でも見飽きることがありません。夜の闇が迫る中、岸際にポッパーを投げていくと、たくさんのラージマウスバスやブルーギルがポッパーに出てきて、私たちのノットを試し、ロッドを曲げてくれました。なんて素晴らしい初日の夜でしょう。釣りは期待以上で、唯一の難点は容赦のない蚊の群れだけでした。一日の締めくくりは焚き火。大おじのKeithが、祖父と二人で若かった頃のこの湖での話を聞かせてくれました。火が燃え尽き、笑いすぎてあごが痛くなるまで火のそばにいて、それから床に就きました。この湖のパイクは早起きだと知っていますからね!
目を覚ますと、キャビンの部屋はまだ薄暗く、スマホのアラームが鳴っています。フライで初めてのパイクを釣りたいなら、起きなければ! KCと私はよろよろとキャビンを出て、ボートへと向かいました。ひんやりした朝の空気と風の強さで、一気に目が覚めます。理想的な朝とは言えませんが、今回の旅は時間が限られているので、なんとかするしかありません。湖の反対側まで走り、風をしのげそうな小さな入り江を見つけました。数時間キャストを続けると、パイク用の重いフライを投げ続けたせいで、肩と腕が疲れてきました。疲労と戦いながら、フライラインがボートのアンカーロープに、ネットに……モーターに……自分の足に……とにかくラインが触れるものすべてに絡まるたび、私の忍耐力はみるみるすり減っていきました! ……湖にあるものはパイク以外すべて引っ掛けたような気がしました。それでもフライで初めてのノーザンパイクを釣ると心に決めていたので、フライを回収して、もう一度キャストしました。
太陽の温もりが失われ、風が強まってきたことで、空気抵抗の大きいフライを投げるのはさらに難しく、疲れるものになりました。私はもう一度フライを替えることにし、それまで使っていたのとはまったく違う色を試してみました。パープルとチャートリュースのフライが当たりそうな気がしたのです。なぜかこのフライには自信がありました。完全に験担ぎですが、まるでフライが語りかけてくるかのように、正しい選択だと感じたのです。正直なところ、フライは魚のためというより、アングラーのためにあるようなときもありますよね。さらに1時間が過ぎると、今のフライへの自信がだんだん薄れていくのを感じました。それでも、もう一度フライを替えるとなるとリグ全体を結び直さなければならないとわかっていたので、そのままのセットで続けました。面倒くさがりの私は、そのまま釣り続けることにしたのです。


フライをボートのほうへストリップしながら、水中できらめき、泳ぐその動きに見とれていました。私は催眠術にかかったように、キャストとストリップの繰り返しの中で白昼夢に浸っていました。そのとき、ボートからほんの数フィートのところで、黒い影がフライめがけて飛び出してくるのが見えました。目を見開き、コルクグリップを握る手に力が入ります。水面が沸き立ち、重たい手応えがリールからラインを引き出していく中、私はロッドに体重を預けました。信じられない思いで、KCに向かって「今の見た!?」と叫びました。
疲れ切っていたはずの腕に、初めてのノーザンパイクとのファイトで新たな力がみなぎりました。魚がボートの下に潜り込み、私は必死にロッドを船尾のまわりに突っ込みましたが、朝から私を悩ませていた船外機が、またしてもラインを捉えてしまったようでした。「まだ付いてる!」と叫びながら、ロッドをさらに水中に突っ込んでラインを外しました。気持ちを落ち着かせてファイトを続けます。1時間にも感じられましたが、実際には10分ほどだったでしょう。パイクはついに降参し、父の、ボートと同じくらい年季の入ったネットへと寄せることができました。そしてすぐに、この魚は父の古いネットには大きすぎると気づきました。KCがなんとかネットをパイクのまわりに回し込み、私は安堵と誇らしさで笑顔になりました。フライで初めてのノーザンパイクをランディングしたのです。でも、戦いはまだ終わっていませんでした。パイクがネットの中で暴れ出し、穴を開けてしまったのです。「ネットに穴が開いた!」とKCに叫びました。KCが手を伸ばし、穴から抜け出そうとするパイクのテールをつかみました。私たちは勝ち取った戦いに一緒に笑い、写真を何枚か撮りながら笑い、そして魚を水へと帰しました。


その夜、焚き火を囲みながら家族にこの話をし、この湖を知り尽くしている家族のみんなを、おかしなフライアングラー二人が釣り負かしたことを笑い合いました。この湖は、ミネソタにある1万を超える湖のうちのひとつにすぎません。でも、その1万の湖の中で、私にとって一番大切なのはこの湖です。ここには私の最も大切な思い出がいくつも詰まっていて、その思い出は戻ってくるたびに増えていきます。ここに来ることは、私にとって心のリセットなのです。KCと私は、ホリデーシーズンのミネソタの厳しい寒さは避けることにして、毎年この湖に家族と一緒に戻ってくることを、私たちの伝統にしようと決めました。来年が今から待ちきれません。
原文:Midwest Traditions(Kayla Lockhart/REDINGTON・Far Bank Enterprises、2017年8月22日)
写真:REDINGTON・Far Bank Enterprises
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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