シアトル周辺に住むというのは、ティム・バートンの映画の中にいるようなもの——暗くて気が滅入ります。9月中旬から6月下旬まで、太平洋岸北西部(PNW)は闇に包まれます。「懐中電灯の季節」と呼ぶ人がいるのを聞いたことさえあります。出勤するときも暗く、帰るときも暗い。日が短いだけでなく、天気もおよそ快適とは言えません。まるで時計仕掛けのように、木曜と金曜に一番激しく雨が降り、ちょうど週末に合わせて川を増水させてしまうのです。おかげで冬は、河川の流量計をチェックし、フライを巻いて過ごす長い季節になります。ビタミンDを十分に摂り、数えきれない時間フライをスイングした末に、運がよければ1尾を手にする——そうしているうちに雲が晴れ始め、日が長くなっていきます。PNWにもついに夏がやってきました。天気がいいときのここは、どこよりも素晴らしい。ただし、キーワードは「天気がいいとき」です。待ちに待った太陽の帰還は、ピュージェット湾へのサーモンの力強い回帰への大きな期待も運んできます。



サーモン釣りは、ロッドを手に一番近いビーチへ向かい、リミットいっぱい釣り上げる——そのくらい簡単なこともあります。実際、ビーチフィッシングはそれほどシンプルなものですが、そんなふうにうまくいくことはめったにありません。フライロッドでビーチからサーモンを狙うのは、一筋縄ではいかないゲームです。ひとつの場所でサーモンを見つけるための作戦を練るために、何時間もかけていくつものビーチを下見し、潮を研究し、好条件の天候を待つこともあります。タックルについては、6〜8番のロッドならどれでも使えますが、長めのロッドのほうが、バックキャストでラインがフジツボだらけの浜を叩くのを防いでくれます。フジツボはフライもフライラインもあっという間にダメにしてしまうからです。一般的には、ピンク、シャルトリュース、オリーブのベイトフィッシュパターンを何種類かと、シンクティップラインがあれば、幅広い状況に対応できます。ブーツフットウェーダーはビーチフィッシングに便利で、ピュージェット湾の“亜熱帯並み”の水温の中に立ち込むのも快適になります。こうして、本来シンプルなはずの試みを考えすぎてしまった結果、ビーチで過ごす多くの日は、何もない海へ何時間もキャストし続けることになります。そして、もうやめようかと思ったまさにその日に、サーモンは見つかるのです。



ビーチ用のセットアップ
ビーチからカバーできる範囲は広ければ広いほど有利です。新しいCRUXロッドのハイラインスピード・テーパーなら、仲間たちの先まで思いきり遠投できます。7100-4なら、胸まで立ち込んだときでもバックキャストが浜に当たらないだけの長さがあります。胸まで立ち込むときは、ワンピース構造のPalixブーツフットウェーダーが足を暖かく保ってくれます。着脱も簡単で、ビーチフィッシングには理想的です。仲間より深く立ち込み、遠くへ投げ、長く釣り続けましょう。
ポートランドでは日食騒ぎの真っ只中で、KCとKaylaはそこから逃げ出したがっていました。二人は北へ向かい、私とガールフレンドと一緒に地元のビーチで釣りをすることに。潮回りは申し分なく、地元の釣果情報も上々だったので、お気に入りのポイントのひとつへ出発しました。ところが、2時間近く虚空に向かってキャストし続けてもアタリはなく、魚を見つけられる望みは薄れていきました。潮止まりが急速に迫り、チャンスの時間帯を逃してしまったかに思えました。すると突然、目の前の海面がベイトで沸き立ち始めたのです。ベイトが押し寄せてほどなく、ベイトの群れを真っ二つに切り裂くサーモンの背中が見えるようになりました。



気難しいビーチフィッシングのゲームが、一気に簡単になりました。サーモンがベイトを追い回しているのを見つけたら、その方向へキャストし、フライが着水した瞬間からストリップを始める。すぐにバイトがあり、まさに狂乱状態でした。常に誰かが魚を掛けているか、バイトを逃しているかのようでした。一時は4人全員が同時に魚を掛けていたほどです。若いコーホー(ギンザケ)やブラックマウス(未成熟のキングサーモン)をたくさん掛けましたが、全員が運よく「キープサイズ」のコーホーも何尾か手にすることができました。Nicoleは7ポンド(約3.2kg)ほどのワイルドフィッシュを釣り上げ、その魚はバッキングまでラインを引き出していきました。始まったときと同じくらいあっという間に、時合いは終わりました。


潮が止まると、すべてが終わり、湾は再び不毛の荒野に戻りました。その日最後の魚のひとつは、Kaylaが釣り上げたハッチェリー(放流)のコーホー。市場では1ポンドあたり20ドルもする魚ですから、彼女はそれを締めました。その夜は、焼きたての新鮮なサーモンがディナーになりました。日食騒ぎが終わり、レイバーデーの連休も過去のものとなり、サーモンシーズンの終わりが、懐中電灯の季節の再来とともに足早に近づいています。残りわずかなサーモンシーズン、私たちはこのシンプルなはずの釣りをこれからも考えすぎながら、せめてもう1尾を求めて通い続けるつもりです。
原文:Beach, Don't Kill My Vibe(Redington/REDINGTON・Far Bank Enterprises、2017年9月17日)
写真:REDINGTON・Far Bank Enterprises
日本語訳:Fly Fishing Outfitters WALTON

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